告知されるまで 2 − お決まりのルーチンの終焉 −

11/01/2022

告知

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こうして、わたしは8年前の検査で「悪性所見なし」の結果を勝ち取ったのだが、診断を受けた乳腺症も乳がんと同じくマンモグラフィーで白っぽく見えること、さらにわたしの場合はそれがだいぶ広く白くうつっていて、万一乳がんになったときに見つかりづらいということで、その後定期的に検査を受けることになった。

大きな病院で3か月ごとに数回の検査をし無事にクリアした後は、家から通いやすいクリニックを紹介してもらい半年ごとの検査を行うようになった。毎回のエコーと2回に1回のマンモグラフィーだ。

ところで、たしの左胸には触ると少しごつごつする部分がある。しこりのようなものに触れることは乳腺症ではよくあることだ。これが8年前に生検を行った部位である。

30代後半になると、生理前の胸の張りがとても強くなってきたが、これも乳腺症にはよくある症状。生理中にしこりを強く感じ、でも生理が終わると張りのおさまりとともに、しこりのごつごつも少し和らぐ。そして、検査でも「前回と画像を比べてみても、変化がないから大丈夫でしょう」と毎回言われ、ほっとする。このお決まりのルーチンを7年間繰り返してきた。

繰り返してきたし、このルーチンがいつまでも続くと思っていた。

2022年になる頃、生理後のしこりのごつごつが前ほど和らぐことがなくなった、ような気がした。でも、それを訴えた2月の定期検査でも、いつもの「前回と画像を比べてみても、変化がないから大丈夫でしょう」の言葉をもらった。

なんだ、そっか。大丈夫なのか。ぜんぶ乳腺症のせいなんだ。 そうだよね、だってこの場所は8年前に生検をやって、大丈夫だったところなんだから。

になり、生理後のごつごつの和らぎはさらになくなったような気がしていた。でも2月も大丈夫だったし。きっと大丈夫なんだろうなって思った。しかし、夏が近づく頃、前よりもしこりを感じるようになっているような気がした。それまでと、ごつごつの感触が違うような。

大丈夫だよね。え、大丈夫だよね。 たぶん大丈夫だと思うけど。え、ちがうよね?

きっと大丈夫だろうという気持ちもあって、定期検査で診てもらえばいいかと、すぐに病院にかけこむことはしなかった。そして8月の定期検査の日が訪れた。

「最近、いつものしこりが、前よりもごつごつするような感じがするんです」と先生に告げた。いつもの「変化がないから大丈夫でしょう」の言葉を待ちわびながら。

しかし、先生はわたしの左胸のしこりを触った瞬間に顔つきを変え「ちょっと組織をとらせてもらうね」と言った。8年前のクリニックの女医さんの表情を思い出した。表情を見た瞬間に感じた「あ、先生、いま、これは悪性かもしれないと感じたんだな」という気持ちも一緒に思い出した。こんな気持ちはもう二度と味わいたくなかったのに。

「ちょっと準備するから待ってね」と言われ、その数分後には部屋が暗くなり、8年ぶりに聞くバチンバチンという音が部屋に響き渡った。

不安な気持ちとは裏腹に、頭の中は冷静で「8年前は何時間も待たされて、針生検の予約をするためだけに病院に行ったりもしたのに、こんなふうに「今からやるね」って言ってその直後にやれるような検査だったんだな」とぼんやり考えていた。いや、たぶん冷静なんかじゃなかった。無意識のうちに病気のことを考えることを頭が拒否していたのかもしれない。

その一週間後、わたしは乳がんの告知を受けることになる。

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