告知後の一週間 − 生まれてはじめて消えたいと思った −

11/15/2022

告知

t f B! P L


しんどかった。この一週間が本当に一番しんどかった。

一番といっても、今この文章を書いているのは告知から2ヶ月経ったところで、まだ手術や治療は行う前だから身体のしんどさはこれから経験していくことになるのだけれど、とにかくこの告知後の最初の一週間は心が壊れそうだった。

告知翌日の9/6、火曜日。
わたしの会社では毎週火曜の朝、本社の従業員全員が集まって朝礼をしていて、わたしはその進行役をしている。朝一なので急に誰かに代わってもらうことも難しく、泣きはらした目と寝不足の頭で出社をし、なんとかいつもどおりに進行役を終えた。その直後、直属の上司とさらにその上の役員に時間をもらい、病気のことを告げた。会社では泣きたくなかったけれど、自分の口から病名を出すと、それが心につきささり、また涙が出てしまった。

・詳しいことはこれから検査して決まっていくが、長期のお休みをいただくことになる可能性もある。
・仕事の引継等については、また相談させてほしい。
・仕事はできるけれどメンタルが不安定なので、気持ちが落ち着くまでリモートにさせてほしい。

という話をして、当面のリモートワークを認めてもらった。これは本当にありがたかった。仕事の整理をし、業務でのかかわりが多い同僚たちにも状況を伝え、帰宅した。

リモートワークにはしてもらったが、仕事があるのはありがたかった。だってなにかをしていないと、気を紛らわせていないと、病気のことばかり考えてしまう。

がん。ガン。癌。
がんになってしまった。

それから数日は、仕事をしていても、ほんの少し気を緩めると、勝手に涙があふれてきた。

全然食欲がわかなかった。風邪をひいても、インフルエンザにかかったりコロナワクチンを打って高熱が出たときでさえも、ほとんど食欲がなくなることのないこのわたしが。食欲はわたしの健康をはかるバロメーターだと勝手に思っていた。食欲がない自分というのがひさしぶりすぎて、それが続くなんてはじめての体験で、これはまずいと感じた。まったく食べないのはよくないだろうと、母親が送ってくれたフルーツや、これなら食べられるかもしれないと買ってきたヨーグルトやスープなどをどうにか胃の中におしこんだ。ぶどう3粒くらいでおなかがいっぱいになった。生きるために食べていた。(ちなみに平常時はぶどう30粒も余裕でいけるくらいよく食べる。笑)

仕事を終えたあとの時間は、本当は調べ物をしたかった。
まず、これからお世話になる病院。病院の場所、通いやすさや実績などを調べたい。そして、乳がんの手術にはどんなタイプがあるのか(温存手術と全摘があって、再建もできることくらいの知識しかなかった)、仕事の引継のことも考えなければいけないから、どんな治療があってどれくらいの期間の治療になるのか、どれくらい休みを取らなきゃいけないかなどもちゃんと調べたかった。

でも全然だめだった。調べようとすると気持ち悪くなってしまう。病気のことを考えるとそれだけで吐き気がしてくる。とにかく数日は心のダメージを減らそうと思った。少し回復し、しっかり時間の取れる週末に調べよう。

告知日とその翌日は泣き疲れて寝て、それからは眠れない日が続いた。
食べられず、寝られず、心も体もどんどん弱っていった。

さらに追い打ちをかける出来事があった。
告知の3日後に彼とお別れすることになった。
子どもが望めなくなってしまうということが理由だった。彼の放った「一緒にいて楽しかった。いい子だなと思っていた。こんなことがなければ一緒にいたかった。」という言葉は、わたしをよりいっそう深い暗闇の谷に突き落とした。

こんなことが起きてしまったわたしは、もう誰からも選んでもらえないんだろうな。この先、手術や治療にひとりで立ち向かっていかなきゃいけないんだ。どれだけ痛いんだろう。どれだけつらいんだろう。こわいこわいこわい。立ち向かって、乗り越えても、わたしはずっとひとりなのかもしれない。だって、「こんなこと」が起きてしまったのだから。誰からも選んでもらえないのに生きてて楽しいかな。もう生きてる意味あるのかな。


これまで40年近く生きてきて、そこそこいろいろな経験をしてきたと思っていた。

自分の見た目や性格にも、家族のことにもコンプレックスがあったり、体調崩したりちょっとした病気にもたくさんなってきた。いじめられたこともあるし、パワハラを受けて毎日胃が痛いなかで通勤したこともある。人間関係でもいろいろつらい思いもした。だけど、それまでわたしが経験したつらさなんて、今に比べればたいしたことじゃなかったなって思った。たいていが「仕事を休む」「人と距離をおく」などでどうにかなることだった。(もちろん実際にその状況にいるときには、それはそれで絶望の中にいてこんなふうには思えないんだけど。)

最近Twitterなんかでもよく見かける。
「つらいときは逃げたらいい。逃げるのは悪いことじゃない。」
本当にそう思う。だけど、病気についてはそうはいかない。逃げたら、治療をしなかったら、もっともっとつらい未来が待っているのだから。

まだ見えない、知らない敵に立ち向かっていくことがこわくて、つらくて、生きている意味も見出せなくて。だけど、死ぬ勇気なんかなくて。

自分の存在がすっと消えてなくなってしまえばいいのにと思った。
生まれてはじめて消えたいと思った。

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