わたしは大学病院のある最寄駅に立っていた。
駅を出るとすぐに病院が見える。
今後、何度この光景を目にすることになるんだろう。
あの病院が、この先わたしが戦う場所になるんだ。
そんな気持ちになった。
総合受付でクリニックの紹介状があること、クリニックの先生が予約の連絡をしてくれているはずであることを伝えたが、受付の担当者は専用端末で調べた後に「予約は入っていない」と言った。
まずは問診票を書くように指示を受けた。
そのときにはブログを始めるとも思っていなかったし、後々のために記録を残しておこうなんていう発想もなくてその問診票がどんな内容だったかは忘れてしまったけれど、「病気発覚の経緯」と「妊娠の希望の有無」の項目があったことは覚えている。8年前に乳がんの疑いがあり、それから定期検診をしていて今回発覚したと細かく記載したからだ。そして、妊娠の希望の有無は、数日前に彼と別れる原因になったことだったから。
わたしは両親との関係がそこまでよくなくて、大学生になるとそそくさと親元を離れた。家族との関係がよくなかったり両親の仲が悪かったりすると、結婚願望がなくなるタイプと強くなるタイプがいるようだけれど、わたしは後者だった。実家があまり帰りたい場所でないからこそ、結婚して、子どもを持って、自分であたたかい家庭を築くことが10代の頃からの夢だった。
でも夢は簡単には実現せず、まもなく40歳になってしまう。この年齢からの妊娠はただでさえ難しいのに、乳がんになってしまい、彼とも別れてしまい、もう子どもをもつことは諦めようと思っていた。そう思っていたのに、いざ妊娠の希望があるか聞かれると、なくはない…本当ならほしい…ペンが止まった。
けれど、いろんなことを考えて、いろんな気持ちをおしこめて「なし」にマルをつけた。(妊孕性については、別で改めて投稿できたらいいなと思う。)
総合受付を終えて専門科に行くと受付の女性に「●番の部屋の前で待つように」との指示を受けた。待合席には同年代くらいに見える女性から高齢の女性まで、本当にたくさんの女性がずらっと並んでいた。この方たちはみんな同じ病気なのだろうか、それとも検査をしているだけの方もいるのだろうか。わたしが今感じているような絶望を乗り越えてきた方たちなのだろうか。
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